社労士小垂のコラム (No.9)

No.9 2014年1月20日

36(サブロク)協定ってなんですか?

今回は、お客様から時々ご質問を受けます「36(サブロク)協定ってなんですか?」を解説したいと思います。

アベノミクスの大盤振る舞いの予感や東京オリンピックの誘致成功、円安の進行、株価の高騰など、企業を取り巻く経済環境の変化を先取りし、今年の春闘は賃金上昇を目指しております。
平成25年版の「労働経済白書」(厚生労働省)が発表されましたが、これによりますと現在の労働時間の動向は「所定外労働時間は3年連続で増加した」ということが書かれています。

つまり、残業時間は増えているとのことですので、ここで、残業と労働時間の関係を法的に整理してみますと、労働基準法では、「1週間で最大に働くことのできる労働時間は40時間で、1日で最大に働くことのできる労働時間は8時間」としていますが、現実的には全ての組織で残業が発生しております。
そこで、法律では実際のニーズに応えるため、「所定の手続き」をとれば、残業は可能としたのですが、この「所定の手続き」とは「残業」と「休日出勤」に関して、会社と社員が事前に書面による協定を締結することであり、かつ、この協定を所轄の労働基準監督署長に届け出ることです。

この協定は労働基準法第36条に規定されていることから、通称「36(サブロク)協定」といわれているものです。 

この36協定が無いと、残業や休日出勤をさせること自体ができないことになりますし、法令に基づき残業手当を払っていても違法になります。
ちなみに、36協定は「会社の規模を問わず」、必要な手続きですので、社長1人と社員1人という会社でも残業、休日出勤があるなら、必ず必要になる手続きなのです。

しかし、現実問題として、36協定を出していない会社はかなり多く、私どもに「36協定って何ですか?」と質問されることもよくあります。

そこで、36協定に記載する項目を具体的に見ていきますと、
1.残業、休日出勤の具体的理由 → 納期の締め切り、受注の集中、月末の棚卸しなど
2.残業、休日出勤の対象となる業務の種類 → 営業職、経理職などを指定
3.残業、休日出勤する労働者の数 → 営業10人、事務2人等を明記
4.残業できる時間 → 1日3時間、1ヶ月45時間 1年360時間など
5.36協定の有効期間 → 最長で1年間
等を記載します。

特に、注意すべきなのは、36協定の有効期間ですが、これは有効期間が過ぎれば、「自動的に」無効になるということです。

実際、有効期限が過ぎた36協定を労働基準監督署の調査で指摘された事例もあり、会社は「単に届け出を忘れただけ」と主張したのですが、これは認められませんでした。
結果として、36協定の提出の是正勧告を受け、未払い残業代の支払いも発生したのですが、ちなみに、36協定なしでの残業、休日出勤は「6ヶ月以下の懲役、または、30万円以下の罰金」と規定されています。

36協定の提出は、最長でも年に1回のことなので忘れがちですが、更新することを忘れないようにしなければなりません。

それから、絶対に覚えておいてほしいことがあるのですが、この違反があった場合、「残業、休日出勤を命じた部課長など(現場の責任者)」と「会社(社長)」の両方が責任を取ることになり、ともに処罰の対象となるということですから、課長に対して懲役6ヶ月ということもあり得るのです。

皆様の中には、「社長の責任を問われることはともかくとして、部課長などの社員の責任まで問われることは辛い。」と思われる方も多いのではないでしょうか。
社長様が「自分が責任を取るので、課長の懲役はなんとか勘弁してください」と懇願する場面を見ることになる状況にまで発展してしまう可能性もあるのです。

そこで、36協定の提出を忘れないようにするためには、更新の時期を会社の事業年度の期首や4月1日の年度初めなどに合わせることです。
単純なようですが、これはかなり有効な方法です。

今まで36協定を出し忘れた、更新し忘れたことが原因で、大きな問題に発展した事例をいくつも見てきましたし、マスコミに大きく取り上げられ、風評被害まで発生した事例もあります。
未払い残業代の支払いだけでなく、売上も減少したのでは資金繰りも厳しくなりますし、こうなった会社は本当に厳しいのです。

たかが、36協定、されど、36協定ですので、絶対に忘れないようにしてください。

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