社労士小垂のコラム (No.8)

No.8 2013年11月20日

給料を減額するときの注意点は何ですか?

近年、不況の影響もあり、多くの社長様から「社員の給料を下げたいのですが、注意すべき点は何ですか?」
というご相談を頻繁にお受けします。

ちなみに、社員の給料を下げることは「労働条件の不利益変更」と呼ばれ、法的にはとても難しいことといわれています。

しかし、人件費を削減しないと、経営が成り立たないこともありえますので、そういう場合は、以下の流れで削減を実行していただく必要があります。

(1)給料削減案を作成する

ここでのポイントは、
 削減後の給料が同業同規模の他社と同程度の水準か?
 削減後の給料が標準的な生活費を上回っているか?

(2)給料削減案を社員に周知する

ここでのポイントは、
 説明会を開催する
 個別に説明することも検討する

(3)賃金規程を改定する

(4)社員から個別の同意書をもらう

ここでのポイントは、
 全員から個別の同意書をもらうことがベストです
 多数の同意があれば、給料減額の合理性があると判断されます
 少数者の同意が無くても実施する

(5)給料削減の実施

 
この場合、社員全員からの個別の同意書があれば、特に問題はありませんが、同意書がもらえない場合や、同意している社員が少数しかいない場合は給料削減の合理性が問題になり、裁判等になった場合には非常に苦しい結果となります。

過去の裁判でも、給料の減額に際してその減額について必要性と合理性があれば、「社員個別の同意は必要ない」という判例が出されています。
しかし「必要性と合理性あり」という判断は裁判の結果として生まれるものなので、これを事前に判断することはとても難しいことで、簡単にはいきません。

ただ、給料等の減額の方法がまったく無いというわけではありません。

例えば、基本給は生活するためのお金ですから、多数の社員の同意が無ければ減額は厳しいですが、賞与は利益を分配するという性格のお金なので、法律の規制もあまりかかりませんし、業績により支払われるインセンティブ的な手当なども同じと考えられます。
さらに、一時的な減額は不利益の程度が小さいと考えられますが、長期的な減額は不利益が大きいと判断されますので、賞与などの減額をベースに賃金総額を減額する方向で社員と交渉することが必要となります。
それから、社員の給料を減額する場合、それ以前に役員報酬を減額したり、定期昇給の凍結、廃止などを先に実施すれば、減額の合理性が認められる可能性が高くなります。

上記のような流れ、ポイントに注意して給料の減額を実行することが大切であり、基本的には全社員から同意書をもらうのです。
会社が倒産してしまっては、社員も仕事が無くなり給料ももらえませんから、よく話し合って、理解してもらうことが一番重要なことなのです。
ただし、裁判に発展する可能性も十分ありますので、賃金減額の必要性、合理性の判断は事前にしておくべきですが、先ほども触れましたように、これには明確な基準がないだけに、迷われることもあるかと思いますので、事前に私どもにご相談くださればご一緒に考えさせていただきます。

ただ、「会社の経営が苦しいから給料を減額する」というだけの理由では認められませんので、細かなところまで気を配って、実施することが必要なのです。

経営のポイントは「ヒト、モノ、カネ」の有効活用なのですが、「ヒト」はその中でも一番重要なポイントであり、最も費用のかかる経営資源なのです。
給料の減額等の労働条件の不利益変更に関しては、社員に対してきちんと説明し、納得してもらうことが重要なのですが、過去のご相談の中にはただ単に「給与等の社内規程を変えて何とかしよう」とした結果、取り返しのつかない大きなトラブルに発展した事例もあります。

いつもお伝えすることなのですが、企業経営において、特に人事・労務に関しては形式と運用の両輪が回って初めて会社は社長様の期待する方向に進むのです。
社内ルールの整備とそのルールに沿った確実な運用を心掛けていただきますよう、今後ともよろしくお願いします。

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