社労士小垂のコラム (No.7)

No.7 2013年9月24日

その退職は自己都合ですか?会社都合ですか?

いつもお世話になりありがとうございます。

夏の賞与が支給され、社員の転職、退職の動きが活発となり、私のところにも退職に関するご相談が増えていますので、「その退職は自己都合か?会社都合か?」をご一緒に考えたいと思います。

社員が会社を辞める時、よくトラブルとなるのが退職の理由が「自己都合か?会社都合か?」ということです。
誤解を恐れずに単純化して書けば、社員自らが退職を申し出るのが「自己都合」で、逆に、会社から退職を迫られるのが「会社都合」の退職ということです。

こう書くと、自己都合か会社都合かの判断は簡単な印象を受けますが、実際には複雑で
  • 給料遅配により、退職せざるを得なかった
  • 事業縮小で退職者を募ったら、募集以上の社員が退職した
  • 上司に「そろそろ違う仕事を考えたら?」と言われた
など、判断がつかない場合が多々あります。

結果として、この判断は微妙になることも多いのですが、失業保険の受給と関係がありますから、後日これがトラブルの原因になることがあります。

具体的には「自己都合」であれば失業保険がすぐにもらえず、3ヶ月後の支給となりますし、「会社都合」であれば失業保険がすぐに貰えるということで、退職後の生活に大きな差が出てきます。

また、退職した社員の雇用保険の加入期間によっては、給付される期間に違いが出る場合もありますし、退職金制度がある場合では、「自己都合」では退職金の支給が会社都合の半分程度に減額されたり、「会社都合」であれば退職金が満額貰えることになっている会社が圧倒的に多いことも事実です。

このように、退職の理由で社員が貰えるお金が変わってくるので、退職する社員にとってはどちらになるかが重要なのです。
同じように「給料が遅配」となった会社を辞めた場合であっても、裁判所が下した判例が正反対である場合も多々あります。

代表的な判例を詳しくみてみると、「業績が厳しく、給料を支払えなかった」という共通の事実がありますが、給料の不払いに関する取り扱いが異なることが見受けられます。

自己都合と判断された裁判では、「給料遅配の理由が説明されている」「3ヶ月の遅配で、回復の見込みがあることも社員に伝えられている」点が注視すべき内容となっています。
一方、会社都合と判断された裁判では、「単に給料の不払いが発生している」「社員に対し、説明などもなされていない」「退職は自己都合として、強引に自己都合分の退職金を支払っている」ことなどが判断材料となっています。

この違いは「会社が社員に対する説明責任を果たしているか?否か?」ということなのですが、その前にもっと大事なこととして「退職の意思確認」をしていたかどうかがあります。

まず、社員から「退職したい」等の話があったら、次のような対応をすることが重要となります。

たとえば、「会社の状態が悪いので退職したい」とのことであれば、「自己都合での退職ですね」ときちんと確認し、退職届等を必ず書面でもらうことが絶対必要条件となります。
これは後々、裁判等になったときは大きな証拠となるから必要ですが、強引に退職届にサインをさせることはやってはいけませんので、例えば、「面談の場でサインするように、強引に迫る」とか、「今、サインしないと、退職金が出ないと脅す」ことは、絶対にしてはいけません。

このようなことがあった場合は「脅迫」となり、退職そのものが「無効」となってしまうからです。

結果として、退職理由でのトラブルを回避するためには、
  • 退職願(理由を具体的に記載)を提出させる
  • 退職後進路(アンケートとして)を記入してもらう
  • 離職票を確認させる
  • 退職時のメールや面談メモ等を相互に確認する
等を面倒くさがらずに準備、実行することをお薦めします。

退職後に退職理由でトラブルになった場合、裁判になる可能性が高くなりますが、これらの手続きを明確に行えば、その確率が下がるので、忘れないように行うことが重要です。

また、社長のみの決裁では感情的になり、トラブルとなる場合もありますので、社員の退職の承認は役員会などで行うこととし、その旨を就業規則に記載しておくことや、退職時の面談を行うことでボタンの掛け違いを無くすようにすることも重要です。
いかがでしょうか?

退職理由はその社員にとっては大きな意味を持つため、自己都合か会社都合かは大きな問題です。
もちろん、会社にとっても会社都合の退職の場合は「助成金がもらえなくなる」場合があったり、「退職金の額が膨らむ」可能性も大ですし、「労働基準監督署、ハローワークの調査対象になるかもしれない」などの意味があるので、どちらであるかは重要なのです。

いずれにせよ、会社にとっても社員にとっても、退職理由は大きな問題ですので、この点を明確にするために、上記で解説した手続きをきちんと踏んでいくことが重要なのだと考えます。

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