社労士小垂のコラム (No.44)

No.44 2020年1月20日

同一労働同一賃金への備えは万全ですか?(4)

いつもお世話になりありがとうございます。

No.41でお伝えしたとおり、同一労働同一賃金とは、同じ労働に従事する労働者にはその雇用形態にかかわらず同じ賃金を支給するという考え方です。

これまでも労働関係法において一定のルールがありましたが、2020年4月からはさらに徹底されることになっています。

今回は、同一労働同一賃金が重視されるようになった背景、また、企業における対応方法やメリット・デメリットなどについて解説する4回目となります。

No.42からは、同一労働同一賃金制度を導入する際の具体的な判断基準を紹介しておりますが、今回は各種手当について確認してみてください。

2.同一労働同一賃金の問題点

基本給に付随して支給される手当なら待遇差はOKか?

基本給と同様に、正規と非正規で支給対象となる手当を分けている会社は多いと思います。
ですが、手当の支給要件ごとに待遇差の合理性を検討していくと、ほとんどの手当は同様の支給が求められるという判断になります。

対応
項目
解説
同じ待遇が求められる
通勤手当
それぞれ正規・非正規で支給基準や支給額に差が無いことが求められる
食事手当
昼食時間帯を挟んだ勤務のない非正規社員に、食事手当の支給がないことは問題にはならない
地域手当
正規の場合は地域の物価を勘案した地域手当を別で支給しているのに対し、非正規の場合は地域の物価を盛り込んだ基本給設定にしている場合は、非正規社員に地域手当の支給が少なくとも問題にはならない
皆勤手当
 
深夜勤務手当
(割増賃金とは別に手当として支給する場合)
 
バランスの取れた待遇が求められる
役職手当
雇用形態を問わず同じ役職につく場合は、同一の支給が前提であるものの、正規と非正規で役職の内容、責任に一定の違いがある場合は、その相違に応じた支給は合理性が認められる

このほか、出張旅費などの規程も宿泊費の上限額や日当に関して、正規と非正規の間に不合理な待遇差がないか、などももれなく確認する必要があるでしょう。

賞与にも均等・均衡が求められる?

賞与はもともと支給自体が確約されたものではないため別と考えてもよいか?というと、そんなことはありません。

実は、非正規社員には賞与を支給していない、雇用形態ごとに異なる支給基準を設けているという場合は、見直しが必要となるのです。

賞与も給料同様に前提が同じであれば同じだけの支給が求められ、前提が異なるのであれば異なる程度に応じてバランスのとれた支給が求められます。

なお、待遇の見直しによって正規・非正規社員の待遇悪化があってはならないとされていますので、基準の見直しと同時に賞与原資額の増額も当然必要になるでしょう。

労働者側からすると大変嬉しい話ですが、非正規労働者が多く働く企業では多額のコスト増が見込まれます。

その他の福利厚生なども対象になる?

同一労働同一賃金による待遇差の改善はいったいどこまで求められるのでしょうか。

気になる福利厚生についても紹介します。

①食堂や休憩室、更衣室など福利厚生施設の利用
同一の権利を提供する必要があります。
②慶弔休暇
同様の権利を提供する必要があります。
ただし、月の就業日数の差やシフト勤務の実態を踏まえ、勤務日振替での対応を基本としつつ、振替が困難な場合のみ慶弔休暇を付与する等の取り扱いは、問題ありません。
③病気休職
同様の権利を付与する必要があります。
ただし、労働契約の残存期間を超えた病気休職の付与まで必要とはされておらず、病気休職の期間を契約期間の終了日までとすることは問題ありません。
①リフレッシュ休暇
同様の権利を付与する必要があります。
雇用形態を問わず付与対象とすることは必要ですが、フルタイム労働者とパートタイム労働者の間で、労働時間に比例した差をつけることは問題ありません。

同一労働同一賃金を検討するにあたり賃金テーブルや各種手当の見直しを行うのと同時に、社員の誤解を招くことのないよう、実態にあわせた名称の見直しも必要となるでしょう。

次回は、皆様方が同一労働同一賃金を導入するに当たり、気をつけなければならない具体的な内容について掲載してきたまとめをしたいと思います。

改正法の施行まであと2ヶ月(中小企業は1年2ヶ月)は非常に短く、早急なご対応が必要になりますので、ご注意くださいますよう、よろしくお願いいたします。

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