社労士小垂のコラム (No.41)

No.41 2019年7月24日

同一労働同一賃金への備えは万全ですか?(1)

いつもお世話になりありがとうございます。

2018年6月29日に労働基準法などの改正案を含む「働き方改革関連法」が成立したことで、同一労働同一賃金にかかわる「パートタイム・有期雇用労働法」(これまでの「パートタイム労働法」の対象に有期雇用労働者も含めて法律名も変更)、「労働者派遣法」が改正されました。

同一労働同一賃金を含む改正法は、2020年4月1日から施行(中小企業の「パートタイム・有期雇用労働法」の適用は、2021年4月1日から)されることになっており、各企業においてはそれまでに対応を検討・準備しなければなりません。

そもそも同一労働同一賃金とは、同じ労働に従事する労働者にはその雇用形態にかかわらず同じ賃金を支給するという考え方です。
これまでも労働関係法において一定のルールがありましたが、2020年4月からはさらに徹底されることになっています。

同一労働同一賃金が重視されるようになった背景、また、企業における対応方法やメリット・デメリットなどについて数回に分けて解説します。

繰り返しになりますが、同一労働同一賃金とは、同じ仕事に就いている限り、正規雇用労働者であるか、非正規雇用労働者であるかを問わず、同一の賃金を支給するという考え方です。
様々な事情により、非正規雇用を選択する労働者が増加している中、政府はいわゆる働き方改革のひとつとして、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差を解消し、多様な働き方を選択できる社会にすることを目指しています。

今回の「働き方改革関連法」の成立により改正された、「パートタイム・有期雇用労働法」、「労働者派遣法」では、同一労働同一賃金について、次のような改正が行われています。

(有期雇用労働者とパートタイム労働者について)
正規雇用労働者との不合理な待遇差を禁止し、個々の待遇ごとに、当該待遇の性質・目的に照らして適切と認められる事情を考慮して判断されるべき旨を明確化
(有期雇用労働者について)
正規雇用労働者と「職務内容」や「職務内容・配置の変更範囲」が同一である場合には、均等待遇を確保することが義務化(パートタイム労働者については、従来から義務あり)
(派遣労働者について)
「派遣先の労働者との均等・均衡待遇」または「一定の要件(同種業務に就く一般労働者の平均的な賃金と同等以上の賃金であることなど)を満たす労使協定による待遇」のいずれかの待遇を確保することが義務化

同一労働同一賃金ガイドラインが目的としているのは、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者および派遣労働者との間の不合理な待遇差を是正することです。
つまり、このガイドラインが待遇改善の対象としているのは、「短時間・有期雇用労働者および派遣労働者などの非正規雇用労働者」であるということです。

ガイドラインで示された適用範囲を簡単にまとめますと、次のようになります。
  1. 通常の労働者とは、無期雇用のフルタイム労働者のこと。一般的な正社員のほか、有期契約労働者から無期転換したフルタイム労働者なども含まれる。
  2. このガイドラインは、同一の企業や団体内で、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者および派遣労働者との間に不合理な待遇差が存在する場合に参照すべきものであり、他社との待遇差は対象とない。
  3. 通常の労働者である正社員間の待遇差や、正社員と無期転換したフルタイム労働者との間の待遇差は対象としない。
  4. 派遣労働者について、同一労働同一賃金を考えるべきは派遣元事業者および派遣先事業者の双方であるため、短時間・有期雇用労働者の対応とは切り分けて考える必要がある。

同一労働同一賃金については、前述のとおり、2020年4月1日から施行(中小企業の「パートタイム・有期雇用労働法」の適用は、2021年4月1日から)されることが決定しています。

具体的には、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消をはかるために両者を比較し、前提が同じなら待遇も同じ(均等)、前提が異なるなら、バランスのとれた待遇(均衡)を求めるものです。

待遇差の改善といっても給与、賞与、福利厚生など、何がどこまで求められるのか、分かりづらいとお悩みの経営者の方も少なくありません。

ちなみに、同一労働同一賃金の目的は非正規労働者の待遇改善なので、均等・均衡をベースに待遇を見直した結果、労働者の待遇を下げるようなことがあってはならないとされています。

ただし、長期的な観点で考えると支給基準や評価制度の見直しにより、待遇が向上する労働者が出る一方で、将来的に今より待遇が下がる労働者が出てくる可能性も十分あり得るというのは、よく取りざたされる問題点です。

次回以降、皆様方が同一労働同一賃金を導入するに当たり、気をつけなければならない具体的な内容について考えて参りたいと思います。

改正法の施行まであと8ヶ月(または1年8ヶ月)は非常に短く、早急なご対応が必要になりますので、ご注意くださいますよう、よろしくお願いいたします。

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