社労士小垂のコラム (No.38)

No.38 2019年1月22日

準備は万全ですか!働き方改革関連法が施行されます

いつもお世話になりありがとうございます。

働き方改革関連法案が可決され、2019年4月から順次施行されます。

就業機会の拡大や労働生産性の向上などを進めていくために、働き方改革関連法を正しく理解し、制度を導入していくことが望まれます。

今回は法律の実施時期や、実施に伴って起こる影響、元の法案から変更された点についてご一緒に考えていきます。

働き方改革関連法とは、雇用対策法や労働基準法など、労働規制にかかわる一連の法律の改正を通して、労働者が多様な働き方を選択できるような社会を目指して作られた法律です。

具体的には、長時間労働の是正、柔軟な働き方の実現、公正な待遇の確保といった視点から、個々の細かな条文が定められています。

以下に、代表的な施策をまとめてみました。

1.残業時間の上限規制(大企業:2019年4月〜、中小企業:2020年4月〜)
時間外労働の上限が月100時間、年720時間に設定され、月45時間を超える月は6ヶ月までかつ複数月平均80時間を上限とします。
2.有給休暇取得の義務化(2019年4月〜)
年間10日以上の有給休暇がある労働者が5日以上の有給休暇を取得することが、企業に対して義務づけられます。
3.勤務間インターバル制度(2019年4月〜)
勤務の終業時間と始業時間の間に一定時間インターバルを置くことを定める勤務間インターバル制度の普及促進に努めなくてはいけません。
4.中小企業への割増賃金率の猶予措置の廃止(2023年4月〜)
月60時間以上の時間外労働に対する割増賃金率(50%)の導入について、中小企業に対してなされていた猶予が廃止されます。
5.産業医の機能強化(2019年4月〜)
事業者が衛生委員会・産業医に対して健康管理に必要な情報を提供することが義務づけられました。
6.同一労働同一賃金(大企業:2020年4月〜、中小企業:2021年4月〜)
正社員と非正規雇用労働者などで区別をせずに、同一の労働をしたときは同一の賃金を支払わなくてはいけません。
7.高度プロフェッショナル制度の創設(2019年4月〜)
高度に専門的な職務に就き、一定の年収を有する労働者について、本人の同意などがあれば労働時間等の規制の対象外とすることができます。

今回の働き方改革関連法の施行によって、以下のような影響が考えられます。

賃金格差の縮小

同一労働同一賃金は、正社員と非正規雇用労働者の間に存在する不合理な待遇の差を解消してくれることが望めます。
また、正社員と非正規雇用労働者の格差だけでなく、年功序列のような年齢による格差も縮小されるものと考えられます。

正社員の待遇抑制

同一労働同一賃金の実施によって正社員と非正規雇用労働者の格差が是正されていく一方で、非正規雇用労働者の賃金などによって人件費を調整していた企業では、正社員の待遇を抑制することによって人件費を調整する可能性が考えられます。

労働力不足が顕著になり、女性・高齢者の活躍への期待

現在もすでに大きな課題となっている労働力不足が、長時間労働への規制がかかることによって、より一層顕著になっていくことが考えられます。
そのため、人手不足により長時間労働が常態化しているような業種では、淘汰が起こることもありえます。
しかし、このことによって女性や高齢者に対する雇用が広がる可能性も考えられるでしょう。

雇用の流動化や多様化

長時間労働が規制されると労働効率の良い労働者が求められるようになり、労働市場の垣根を越えて、スキルのある人材へのニーズが高まるでしょう。
そのようになれば、雇用の流動化が促されると考えられ、高いスキルを備えた労働者の活躍の場が、特定の職種や職場などに限定されなくなることによって、働き方の多様化が促進されていくことも考えられます。

今回は、働き方改革関連法の概要や、それがもたらす影響について解説してきました。

働き方改革関連法が企業にもたらす影響には、正社員の人件費の圧縮などのプラスの効果が期待できる一方、雇用市場の流動化することで、労働市場から適正な価格の下で労働力を調達できない企業が淘汰される可能性など、必ずしもプラスになるとはいえない部分もあります。

長期的な影響として、働き方が改善されることによって低迷し続ける日本の労働生産性が向上する可能性や、労働市場の流動化によって優秀な人材を調達する機会が増大する可能性もあります。

短期的な損得ではなく、より広い観点から自社の労働環境を考え直していくことが求められます。

アンケートでは、5割の企業が"働き方改革法案"「経営に支障が出る」と回答しており、支障が出そうな法案トップ3は、「時間外労働の上限規制」「年次有給取得の義務化」「同一労働同一賃金の義務化」となっておりました。

「"働き方改革法案"が施行されることで、経営に支障が出ますか?」と伺うと、47%の方が「支障が出る」(大きな支障が出る:9%、やや支障が出る:38%)と回答されており、企業規模が大きくなるにつれて「支障が出る」と回答する割合は増加しています。

「大きな支障が出る」「やや支障が出る」と回答した方に、「経営に支障が出そうな法案はどれですか?」と伺うと、第1位は「時間外労働(残業)の上限規制」(66%)であり、『結果的にサービス残業の増加で補う状態になってしまうと思う』(金融・コンサル関連/100名〜299名)という声が寄せられました。

第2位は「年次有給取得の義務化」(54%)となり、『人員不足の状況で、休みの人がいる分、1人の働く時間が長くなると、支払う賃金が上がる。結果、利益を圧迫してしまう』(サービス関連/100名〜299名)という声が挙がりました。

第3位は「同一労働同一賃金の義務化」(43%)があげられ、『労務費の上昇が考えられ、経営を圧迫しそう』(流通・小売関連/300名以上)という声が寄せられました。

業種別に見ると、メーカーの「同一労働同一賃金の義務化」(62%)、「中小企業の時間外割増率猶予措置の廃止」(41%)、広告・出版の「年次有給取得の義務化」(70%)、「勤務間インターバル制度の普及推進」(30%)が他の業種の回答よりも目立ち、影響が大きいとされました。

この4月から施行され、皆様方に大きな影響を及ぼしそうな法案ではありますが、決まってしまった法律は遵守しなければなりません(罰則も強化されております)。

「働き方改革関連法」の施行に合わせ、社内のルールをしっかりと見直し、会社の成長・発展に寄与する絶好の機会ととらえていただきますよう、よろしくお願いいたします。

この機会に、社内規程等の見直し、改訂も併せてお願いいたします。

タイトル一覧



評価制度・賃金制度づくり会社を守る就業規則セミナーサイトマップ
HOMEサイトマップお問い合わせ情報保護方針