社労士小垂のコラム (No.37)

No.37 2018年11月22日

朝礼や親睦会への参加は業務命令になるのか?

いつもお世話になりありがとうございます。

皆様方の会社でも年末年始に全社または職場単位での「忘年会」や「新年会」が催されているかと思いますが、社員たちは喜んで参加されているでしょうか?

一時期影をひそめていた「社員旅行」や「飲み会」が復活しているようにも聞いておりますが、若い人の中には組織的行事には参加しないという方も多いようです。

先日、顧問先の社長様から、
私の会社では就業前に朝礼を行い、その日の業務内容に関する連絡を行っていますが、ある社員はいつもこの朝礼に参加せず、注意をしても一向に直そうとしません。
さらに、この社員は職場の飲み会などにも全く参加しないのですが、この場合、強制的に参加させる方法はないのでしょうか?
というようなご相談を受けました。

以前は活発に行われていた「飲み会」などは、社内の親睦を深め、結束を図るのに有効な手段とされていましたが、参加を強制するためにはそれが「業務命令か否か」ということが「仕事か仕事でないか」の判断基準となります。

つまり、業務でなければ強制はできないのです。

では、会社が強制参加の業務命令を発令すれば、どんな社員も参加せざるを得ないこととなりますが、「飲み会」が業務とは考えにくいと思われます。

そこで、業務命令について考えるために、「業務命令」を定義づけてみますと、
  • 業務の遂行について会社(上司)から発せられる指示、命令
  • 就業規則等の合理的な理由に基づく命令
となっており、社員はこれに従う義務があるのです。

これを基に考えますと、「飲み会」は業務とは考えづらく、業務命令と言っても参加を強制することはできないと思われます。

しかし、朝礼となると話が変わってきて、これに関する裁判例によりますと、
  • 朝礼は業務時間である
  • 就業前でも業務時間なので、これに対応する賃金は支払うこと
  • 朝礼への不参加による懲戒については違法性がない
として、朝礼の位置づけをはっきりさせています。

朝礼において、当日の勤務内容や心身の異常の有無の確認をしたり、勤務に就く心構えを整えさせるといったことを実施する内容であれば、立派に業務時間と言えるでしょう。

さらに、朝礼を業務時間と捉えるならば、当然に「賃金」の支払い義務が発生しますので、朝礼の時間を最初から労働時間と位置づけた方がトラブルの防止につながるのです。

朝礼が業務であるならば、参加を強制するのは業務命令であり、参加しない社員は当然に業務命令違反となります。

冒頭のご相談の件ですが、社長様は朝礼を「就業時刻の前」とお話しされていますので、おそらく、この時間に対しての賃金は考えてはいないでしょうが、朝礼の内容をみてみると業務指示が朝礼時に発せられていますので、この時間は当然に業務時間と言えるでしょう。

もし、朝礼の時間がきちんと賃金の対象となることが理解できていれば、参加しないこの社員も素直に従ったのかもしれません。

また、多くの社長様は「我々の若い頃は違った」とお話しされますが、今は時代も考え方も変わってきていますので、ここは「朝礼は業務の一環」と位置づけし、トラブルを防止することの方が得策です。

仮に、これでも朝礼に参加しない社員の場合は「業務命令違反」として、懲罰の対象とするのです。

それから、「飲み会」についてですが、会社の行事として就業時間内に催されるものであれば、立派な業務ですので、これに不参加ということであれば、欠勤扱いとなるのです。

また、就業時間を数時間早く繰り上げて始める飲み会等もこれに該当することとなりますので、同様の扱いで構わないでしょう。

ただし、単なる上司と部下の飲み会や有志の集いでは業務とは言えませんので、強制参加はさせられませんのでご注意ください。  

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