社労士小垂のコラム (No.34)

No.34 2018年5月21日

突然出社しなくなった社員への対応はどうすべきか?

いつもお世話になりありがとうございます。

ゴールデンウィークも終わり、従業員の皆様も心身ともに通常の業務に復調された頃かと思いますが、この時期、特に新入社員に多く発生する問題があります。

それは、出社してこなくなるという事案です。

社員本人またはその家族からの申し出(診断書提示等)により休職又は退職の意思表示があれば良いのですが、何の前触れもなく出勤しなくなった場合はその対応に苦労します。

そこで今回は「突然出社しなくなった社員への対応」をご一緒に考えたいと思います。

先日、ある社長様から私どもに、
「社員の一人が突然いなくなり、無断欠勤を続けたまま1週間が経ち、携帯電話にも出ないし、自宅のアパートや実家に連絡しても全く所在がわかりません。会社としては、やむを得ず退職扱いにしようと考えているのですが、問題はないでしょうか?」
という、ご相談がありました。

通常、社員が「会社を退職したい」という場合、退職願や退職届を提出し、「会社を辞める」という意思表示をして辞めるのですが、ご相談のケースは「突然いなくなった」という状況で、本人の意思表示も上司への挨拶もなく、「本人の意思」を確認することができません。

もし、本人の身辺に「書き置き」や「退職願」などがあれば、退職の意思が確認できるかもしれませんが、これでは本人の「法的な」意思表示があったとはいえません。
そこで、私どもが皆様にご提案していることは、このような場合に備えるために、一定の事柄を「懲戒解雇理由」として定めておくということです。

具体的には就業規則の懲戒規定の中に、懲戒解雇の具体的事項として
・正当な理由なく、欠勤が14日以上に及び、出勤の督促に応じない又は連絡が取れないとき
という一文を記載することをお奨めしております。

ご相談のケースでは「無断欠勤を続けたまま1週間」なので、後7日を経過しないと上記の規定には該当しませんが、14日以上経過したら、本人の退職の意思表示が無くても「懲戒解雇」が成立するのです。

だから、就業規則に上記のような規定があるか、ないかが重要なのです。
社員が「突然出社しない」ということは「いきなり」発生することなので、今すぐに加筆するべきだと考えます。

しかし、就業規則に書いてある条件が成立しただけでは完全ではなく、それに伴う解雇などの手続きがあることも覚えておかなければなりません。

民法97条では「意思表示はその相手方に到達したときに効力が生じる」としていますので、懲戒解雇の通知も本人に到達しない限り、法的な効力は生じないと考えられているのです。

つまり、「成立」はするが、「効力」は生じていない状況なのです。 

これに関して、会社が社員の妻に懲戒解雇処分の通知書を渡し懲戒解雇した裁判例があり、そこでは「本人に通知が届いていないので、懲戒免職は無効」とされてしまいました。

一般的には、会社が行方不明の社員を懲戒解雇するには「家族への通知」、「社内報に掲載」だけでは効力が認められないと考えられます。

ですから、同じようなケースで、「社員としての地位保全」、「退職金等の請求」で争いが予想される場合、会社は簡易裁判所に対し、公示送達(民法98条の2)の手続きをするべきです。

公示送達手続については、裁判所の掲示場に公示送達のあることを掲示してもらい、かつ、掲示のあったことを官報及び新聞に1回以上掲載するという方法となります。

ちなみに、簡易裁判所の裁判官は官報、新聞へ掲載させる代わりに、市町村役場、または、これに準ずる場所にその旨を掲示することを命ずることもできます。

いずれの場合も、掲示した日から2週間を経過した日に、意思表示が相手方に到達したことになりますので、ここまで行えば問題はありません。

ただし、残された家族等と相談し、「会社には迷惑をかけない」等の念書を書いてもらい、退職、または、解雇をしたものとする場合も多いかと思いますが、万全を期し、後々のトラブルを回避するためには、ここまで徹底して対応しておく必要があると思われます。

「社員の行方不明」などはそんなに多くない事例かもしれませんが、間々あることも事実ですので、このようなケースにでくわしたら、この会報を読み返して頂き、漏れの無いように対応していただきますよう、よろしくお願いいたします。

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