社労士小垂のコラム (No.33)

No.33 2018年1月16日

改正職業安定法により、平成30年1月以降の求人で気をつけるべき点

明けましておめでとうございます。
本年も変わりませず、よろしくお願いいたします。

さて、2017年の通常国会では厚生労働省から雇用保険法、徴収法、育児介護休業法、職業安定法の4つの法律の改正案が提出され、無事通過しました。
人手不足が深刻な問題となっておりますなかで、今回は職業安定法の改正についてご一緒に考えて参りたいと思っております。

職業安定法は「職業紹介の機能強化及び求人情報等の適正化」を目的に改正が行われましたが、今回は会社が求人を行う際に重要となる点を中心に改正内容を解説していきます。

年明け早々の採用を目指して、今まさにハローワークに求人申込をしている、もしくはホームページ等で労働者を募集している会社は、少なくないのではないでしょうか ?
あらゆる業種で人手不足が問題視される中、採用活動に非常に苦戦するケースも多々あるようにお聞きしております。

さて、その「求人」に関していえば、平成30年1月1日より、企業における求人ルールが変更されますので、事業主や採用担当者の方々はまずご確認いただき、対応を進めていただく必要があります。

具体的な変更事項は下記の通りです。

1. 当初の求人票や募集要項に明示した労働条件が変更される場合、変更内容をすみやかに明示すること
2. 求人票や募集要項に明示すべき労働条件に、下記を追加すること
  • 裁量労働制を採用する場合の「みなし労働時間数」
  • 固定残業代を支給する場合の
    「① 固定で支払われる手当に含まれる時間外労働の時間数」
    「② 手当の額」と、
    「①を超える時間外労働について、割増賃金を追加で支払う」旨の明記
  • 募集者の氏名又は名称
  • 派遣労働者として雇用する場合、「雇用形態:派遣労働者」の明記
3. 求人の際、職業安定法に基づく指針等を遵守すること
4. 労働条件変更について、適切な方法で明示すること
5. 求人申込を行う際、適切な職業紹介事業者を選定すること

いずれもさほど複雑な内容ではありませんが、確実におさえておきたい変更事項で、特に皆様方にご注意いただきたいこととしては、

1.ハローワークや職業紹介事業者による求人の拒否

以下の場合、ハローワークや職業紹介事業者は求人を受理しないことが可能になります。
① 労働法違反を繰り返し処分等を受けた事業所からの申し込み
② 暴力団員が役員だったり、暴力団員が事業を支配している事業所からの申し込み

また、ハローワーク等は受理しない案件かどうかの確認のため、求人者に対して報告を求めることができますが、正当な理由なくこれに応じない場合も、ハローワーク等は求人を受理しないことができます。

こちらの施行日は改正法公布から3年以内となっており、すぐに施行されるわけではありませんが、特に①に関しては普段から法令遵守していないと、急な調査もあり得るので注意が必要です。

2.虚偽の求人への罰金

法改正施行後は虚偽の条件を提示してハローワークや職業紹介事業者に求人の申し込みを行った場合、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金となります。

これは、虚偽の条件で求職者を採用した場合ではなく、ハローワーク等に求人の申し込みを行った時点で罰則の対象となる点に注意が必要です。

3.求人をする会社等へ指導監督の範囲を拡大

これまで、職業安定法では、同法に基づく厚生労働大臣の指導や助言、勧告や改善命令の対象となるのは「職業紹介事業者、労働者の募集を行う者、募集受託者、労働者供給事業者」とされていました。

職業安定法に基づいて指導等がされる場合というのは、「差別的取扱の禁止」や「労働条件の明示」「的確な表現による募集」などを言います。

今回は、これらに加えて「求人者、募集情報等提供事業を行う者、労働者供給を受けようとする者」が追加されました。

大きいのは「求人者」が追加されたことで、これにより、ハローワーク等に求人を出した事業所も、職業安定法に基づく厚生労働大臣の指導監督の範囲に加えられました。

ちなみに、法改正以前も指導監督の範囲である「労働者の募集を行う者」と今回加えられた「求人者」の違いがちょっと難しいですが、前者はハローワーク等に頼らず募集(直接募集、文書募集または委託募集)をする場合で、今だと自社のサイトで募集したりすることを言います。

後者の求人者は「労働者を雇用しようとする者」と定義されていますが、ようはハローワーク等を通じて求人する場合を言います。

4.採用の際に労働条件を変更する場合、それを明示することを義務づけ

事業所等はハローワーク等を通じて応募してきた労働者と労働契約を締結する場合、そのものが従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件を明示することが義務づけられています。

今回の改正ではこれに加えて、最初に明示した条件に変更が加えられた場合は、契約する相手に対してその労働条件を明示する義務が新たに加えられました。

要するに、面接のときなど事前に労働条件を明示して、後日、採用ということで労働契約を結ぶ際に、以前明示したものと変更がある場合は、きちんとそのことを相手に伝える必要がある、というわけです。

以上となりますので、ご確認の上、ご対応くださいますよう、よろしくお願いします。

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