社労士小垂のコラム (No.32)

No.32 2017年11月22日

労働基準監督署の調査とは?

いつもお世話になりありがとうございます。

毎年11月は労働基準の強化月間であり、労働基準監督署の調査が重点的に行われることになります。
そこで今回は、労働基準監督署の調査は、何を目的に、どんなことを調べるのかについてお話ししたいと思います。

<労働基準監督署の調査>

労働基準法、労働安全衛生法に関して、対象企業の法令違反の発見、違反した企業への是正、指導が目的で実施されます。 所要時間は2時間程度とされていますが、半日を要する調査もあります。

<定期監督>

労働基準監督署の定めた方針に基づいて、定期的に実施される調査が定期監督です。
2〜5年周期で行われるとされていますが、実際には対象企業を選定して実施しています。

現在は安全衛生に関する調査内容が多く、特に労働者の労働時間、サービス残業の有無、それに伴う健康管理に対する健康診断の実施状況と実施後の措置方法について重点が置かれているようです。

その他、法改正により指導のための調査が必要とされる場合や、ニュースで大きく報じられた事例に並び法令違反取り調べ調査が必要とされる場合に実施されることもあります。

<申告監督(臨検)>

企業における現就業中の社員(契約、パート、アルバイト含む社員)や退職後の社員から、通報(違反申告)があった場合に実施される調査が申告監督です。

労働基準監督署から事前の連絡はありますが、社員からの通報内容によって悪質な違反と判断された場合、対象企業が資料を改ざんしてしまうことを防止するために直接企業へ調査訪問することもあります。
初めから「法令違反」がある前程で調査するので、厳しく調査されることが予想されます。

<災害時監督>

業務中に大きな労働災害が発生した際、再発防止のために実施される調査が災害時監督です。

調査場所は事故が起こった現場だけでなく、工場内の機械やライン、資材保管場所の状態など、安全管理体制全般にわたって調査されます。
現在は対象企業の正規雇用社員だけでなく、派遣などの非正規雇用社員も増加していることから協力会社との契約関係や、責任範囲なども調査の対象となります。

<再監督>

再監督は、初回調査をした全ての企業に対して実施されるのではなく、社員から再度通報があった場合や、期限までに「是正報告書」が提出されなかった場合、また「是正報告書」の内容に問題があった場合に実施されることになります。

<監督の流れ>

調査は労働基準監督署の労働基準監督官(2名体制)によって実施されます。監督官は対象企業の業務関係場所(工場、事務所、寮、倉庫など)に立ち入り、帳簿や書類の提出を依頼することができますし、事業者や労働者に対して尋問することができ、それに応じない場合は強制捜査や、使用者を逮捕することができる強権を持っております。

① 事前連絡 → ② 調査(臨検)(・企業概況確認・労働関係帳簿の確認・聴取) → ③是正勧告

<監督官が行う調査時の書類確認事項>

賃金台帳
法律において事業所に備え付けなくてはならないものとされているので、きちんと賃金台帳が常備されているか確認する。
労働条件明示書
労働者の雇入時に賃金、労働時間等必要な労働条件を書面で明示し、労働者本人に渡しているか確認する。
就業規則
労働基準監督署に就業規則の届出を出しているか、就業規則の内容が法律や法改正と合致しているか、就業規則がパートやアルバイトにも適用しているか確認する。
賃金控除
賃金台帳を見ながら賃金控除項目を確認。控除項目が労使協定と合致しているか、控除内容に問題はないか確認する。
衛生管理者、安全管理者、産業医の選任
選任者が選任されているか、労働基準監督署に選任の届出がされているか確認する。
安全衛生委員会の議事録保管
選任者を含む安全衛生委員会が発足され、委員会の議事が取られているか、また社員に周知されているか確認する。
健康診断
定期、特殊(深夜を含む)など必要とされる健康診断が実施されているか、診断結果や個人票を見ながら確認する。最近は、労働安全衛生に関する取り組みが強化されているので、健康診断個人票の結果が悪い労働者に対して、健康診断事後措置(産業医による面接、再検査など)がされているか確認する場合もある。
有期労働者の契約更新
労働者の契約更新が法的に問題なく実施されているか、労働条件明示書にある更新の有無の記載がどのようになっているか確認する。
労働時間の管理・残業
監督官が最も関心を持っている項目であり、最近では管理者の時間外手当について、厳しくチェックされる傾向がある。また、サービス残業と呼ばれる時間の管理方法について、特に厳しくチェックされる場合がある。

<調査時の注意点>

  • 調査に非協力的な場合、監督官から『何か隠したり誤魔化そうとしている』と思われ、調査が長引いたり調査項目が増えることがあります。感情的にならず、誠実に対応することが重要です。
  • 法令上、意味のない反論は通用しません。運用上の問題点などで意見の相違があり、言い分が法律と合致しているという場合には主張すべきですが、法令上、意味のない反論は通用しません。
  • その場で取り繕うことはできませんので、日頃から適正に管理しておくことが最善策です。

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