社労士小垂のコラム (No.29)

No.29 2017年5月26日

試用期間中の社員は解雇しやすいのか?

いつもお世話になりありがとうございます。

早いものでもうすぐ5月も終わろうとしており、新入社員の試用期間も2カ月を経過し、そろそろ適正の把握もできつつあるころではないでしょうか?

日本の企業のほとんどが入社後3〜6ヶ月間を試用期間としており、その間において本人の適性をより詳しく把握し、本採用後の配置を決定することとなります。

皆様も何度もご経験がおありかと思いますが、「雇ってみたら期待していたほど使えなかったので、試用期間中だから直ちに解雇したい」ということがよくあります。

私どもにも、試用期間は本採用になるまでの「お試しの期間」であると思われて、通常の解雇より簡単に考えて、この期間での解雇についての問い合わせが多くあります。

そこで今回は、「試用期間中の社員の解雇」についてご一緒に考えてみたいと思います。

まずはじめに、「試用期間中の解雇」を考える前に「一般的な解雇」についてみてみましょう。

社員を解雇する場合、一般的には次の2つの視点で考えることがポイントとなります。
  • 解雇の原因となる客観的な事実があるか?
    → 就業規則等に具体的な解雇要件が記載されていて、それに抵触するか?
  • 社会の通例に照らしてみて相当か?
    → 誰がみても、解雇することがやむを得ない状況か?
この2つを満たせば「法的には」解雇要件を満たしていると考えることできるのですが、実際にはそこに至るまでの過程も重要視されますので、
1.改善の機会を与え、解雇回避の努力を実施したか
2.本人がどのように考えているか、弁明の機会を与えたか
が必要になってまいります。

このことは、「会社が強引に社員を解雇に追い込んでいないか」ということを検証するために裁判等で争点となる部分です。

ですから、実際の運用面では就業規則等に上記1や2の手続きを記載し、具体的な問題が起きた場合にはこれに沿った手続きをきちんと踏む必要があります。

このように、「一般的な解雇」には越えなければならない障壁が多々ありますが、「試用期間中の解雇」の場合は「一般的な解雇」より若干広い範囲で認められる面があります。

具体的にはどの部分が緩和されているのか過去の判例で見てみますと、
「就業規則に能力、勤務態度、健康状態等で不適当と認める場合は解雇すると規定してあり、試用期間中に指導や教育は十分に行われていたにもかかわらず、新入社員に改善の可能性が無いと判断したことは相当の理由があり、解雇は妥当である」
とし、会社が勝訴した例があります。

この事例では上記2の「本人の弁明の機会」は与えていなかったのですが、これに関する裁判所の判断は「改めて機会を与える必要なし」だったのです。

この判例から言えることは、試用期間での解雇については指導、教育の実施が重要視され、「本人の弁明は関係なく、結果が全て」ということになり、この部分が一般的な解雇と違う部分です。

以上のように「一般の解雇と試用期間中の解雇では、試用期間中のほうが緩い」ということは間違いのないところではありますが、3か月の試用期間を設けている会社で、2カ月と20日の時点で解雇した事例での裁判で「試用期間中での解雇の時期が不適当」と判断されたこともあります。
この裁判では、「解雇すべき時期の選択を誤った(試用期間満了まで様子をみること))という判決になりました。

では、試用期間中の解雇について実務上で注意する点をみてみましょう。
1.指導、教育について口頭のみではなく、指導日誌等で記録をとる
→ 裁判等の証拠となりますし、将来における類似事例の対応策となる
2.解雇の見極めは試用期間満了時に実施
→ 途中で行うと見極めが不十分と指摘される可能性があります、途中でもやむなしと判断できれば、即実施
3.解雇の手続きとして30日分の解雇予告手当を支払い、試用期間満了時に解雇する
→ 懲戒解雇事由に相当する重大な事実があった場合は、労働基準監督署に除外申請を行い、予告手当は支払わない(重要)
4.解雇すべきか否かの見極めが出来ない場合は試用期間の延長もありうるが、争いになる可能性大
→ できれば、延長は避けて期間中に判断する
なお、試用期間中の解雇であっても、入社後2週間以内(暦日)であれば、即日解雇でき、労働した分に対応する給与だけを支払えばよく、解雇予告手当は必要ありません。

どんなに緻密な面接を多数回行ったところで、実際に仕事をさせてみないと、本人の資質が分からないことは多々ありますので、どのタイミングで解雇するかは重要な問題であり、これを間違えると、周りの社員が大変な事態になる可能性もあります。

今日ご一緒に考えた内容はどこの会社でも日常茶飯事的に起こり得ることなので、こうしたリスクになることを防ぐためにも、残念ながらお引き取り願うべき人には早めの対策が必要になりますので、ご確認、ご検討をよろしくお願いします。

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