いつもお世話になりありがとうございます。
間もなく新年度となりますので、会員の皆様も何かと気ぜわしくされておられるかと思います。
新年度といえば、新入社員が入社される会社も多いかと思いますので、採用時健康診断も気になるところです。
ただ、採用時健康診断は皆様気にされておられますので、計画的に実施されておられるようですが、もう一つの健康診断(1年に1回の定期実施)で、労働基準監督署の指摘を受けることも多いのです。
先日も、お客様のところに労働基準監督署の調査(解雇した問題社員が相談に駆け込んだ)があったのですが、相談内容(労働時間、残業、割増賃金)もさることながら、定期健康診断についても調べられ、是正指導(定期健康診断の実施記録の欠落)を受けてしまいました。
このように、労働基準監督署の調査では、必ず「健康診断の実施状況」を調査されますが、会社としては健康診断よりも「未払い残業の問題」や「過重労働の問題」を意識してしまいます。
だから、健康診断の実施について「軽く考えている」会社がとても多いのも事実なのです。
「社員に受診しろと言ってはいるのですが、仕事が忙しくて、受けられません」と笑いながらお答えになる社長様も多いのです。
もし、これを実施しない場合は(結果として、社員が受診しない場合でも)法律違反の状態となり、これを放置しておくと「最高50万円の罰金が科せられる」こととなってしまいます。
仮に、会社が健康診断を実施せず、社員が病気等で倒れた場合、裁判等の民事責任の判断で、会社が不利な状況(安全配慮義務違反等)になってしまうこともあるのです。
もう一度言いますが、会社が健康診断を実施していない場合、仮に社員等に何かあったら、会社側の安全配慮義務違反が認められてしまうのです。
これは、会社として、健康診断を実施していた場合であっても、特定の社員が健康診断を受診しない場合も同じと考えられます。
もしも健康診断を受診しない社員に何かあった場合、会社に安全配慮義務違反が認められてしまう可能性が高くなってしまい、裁判等では会社の責任が追及されてしまう、ということになるのです。
こういったことを防止するためには健康診断を受診しない社員に対し、業務命令として、受診命令を出すべきなのです。
具体的には、会社側が積極的に「受診命令」を出し、命令に従わない場合は「懲戒処分を科すことがある」と規定しておくのです。
もちろん、就業規則の懲戒処分の条文で業務命令違反に対する処分が具体的に記載されていることが前提となります。
もし、この受診命令に従わなければ減給も可能ですし、毅然とした態度で臨まないと、いつまで経っても「忙しくて受診できません」となってしまうのです。
労働基準監督署の調査では、健康診断に関する是正勧告を受けるケースが非常に多くありますが、これは単に「健康診断の実施義務を果たしているか?」というだけではなく、会社が社員の健康を「どれだけ真剣に考えているか?」を問われており、社員が健康に働いてくれていることが会社の財産だということに他ならないのです。
会社としては、長時間労働や未払い残業代の問題等に目が行きがちですが、この健康診断の問題も実は奥が深いものだとお考えください。
実際問題、この2つのことができていない会社が多いことも事実ですので、必ず、これらの環境を整備しておいてくださるよう、よろしくお願い申し上げます。