新年明けましておめでとうございます。
本年も変わりませず、よろしくお願いいたします。
さて、先日、会員の社長様からご相談をお受けしました。
「社員が労基署に行き、掃除の時間は時間外労働ではないのか?と相談し、労基署から会社に実態を報告するように連絡がありました。」とのことです。
そこで今回は、繰り返しになりますが、「掃除や制服に着替える時間は労働時間でしょうか?」をご一緒に考えたいと思います。
どこの会社でもあることかと思いますが、常識的に考えれば「仕事をするんだ」という気概をもっていれば、余裕を持って出社し、タイムカードを打刻する前に更衣を済ませておき、自分が気持ちよく仕事を進めるために掃除をすることは当然のような気がします。
しかし、「いつから労働時間なのか?」ということを明確にしている会社が少ないのも事実です。
このように記載することにより、着替え等を済ませて作業を開始できる時刻が始業時刻となるのです。
ただ、最高裁の判例では、「労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいう」と判断しておりますので、皆様方の中にも最高裁が「制服の着替え時間=労働時間」と判断したと誤解されている方も多いと思いますが、最高裁はここまでの判断はしていません。
この裁判では、制服の着用や保護具等の着脱が義務であり、これを怠った場合に対するペナルティの存在等があるので「労働時間」と判断しているので、単に「制服、作業服などの着替え時間」は作業の準備行為とは考えられず、労働時間とは言えないでしょう。
また、この裁判では「着替える場所の指定」も判断の基準になっており、会社が特定の場所を指示して更衣等を義務付けていたことで、「労働者を指揮命令下に置いている」と判断されたのです。
制服に着替える場合、会社に更衣室がある場合がほとんどだと思いますが、作業着や制服を自宅から着用して出勤してもよいし、会社の更衣室を使用してもよいということであれば、会社が場所を指定したことになりませんので、この場合の着替えの時間は労働時間ではないのです。
掃除についても同じことが言え、強制ではなく自主的にやっており、掃除をしないことでのペナルティーがないなど、労働者に不利な取扱いをしないということであれば、労働時間ではないといえます。
また、労働局の調査があった場合、その時間が労働時間であるかないかは「強制」「指示」などの実態で判断するようになっております。
しかし、以前の判例では、「仕事前30分程度は、準備の時間」という判決で、「準備時間は労働時間でない」とし、「残業代の支払いも不要」となったこともあります。
実際に、労働基準監督署の調査が入ったとき、監督官が「良識の範囲で任せます」と言ったこともありますが、朝の掃除や制服への着替え(準備時間)が強制であれば法的には労働時間ですから、全てを大目に見てくれる訳ではありません。
清掃や着替え、または朝礼にしても、使用者の明確な指揮命令がある場合、若しくは、使用者の明確な指示までは無いが黙示の指揮命令下で行われている場合には、労働時間となります。
準備体操等の時間を労働時間としない場合は、出席を強制しないこと、また遅刻しても賃金からその分を控除しないことが大切で、準備体操等に参加しなくても労働者に不利な取扱いをしないということです。
上記の例の通り、「労働時間」は使用者の指揮監督下にあることをいい、必ずしも現実に精神又は肉体を活動させていることは要件とはされていませんので、ご注意ください。
もし、判断が微妙な場合は労働法に強い弁護士や社会保険労務士にご相談される事をお奨めします。