社労士小垂のコラム (No.26)

No.26 2016年11月25日

短時間労働者への社会保険の適用拡大が目の前です!!

いつもお世話になりありがとうございます。

昔から「労働法違反は倍返し」ということが言われておりましたが、本当なのでしょうか?
実は、会社に対して「付加金の支払い」が命令された場合は「倍返し」となってしまいます。

それではここでいう「付加金」とはいったい何なのでしょうか?

付加金とは、会社が労働基準法に違反して解雇予告手当、休業手当、残業手当等を支払わなかった場合、支払いを命令される可能性があるものです。

法律では、裁判所は従業員の請求に基づいて、「未払残業代等と同額の支払いを命じることができる」となっています。 つまり、支払う金額が「最大で2倍」になってしまうのです。 これが付加金の制度であり、裁判所が支払いを命じた場合、会社は違反があった時から「2年以内に」支払わなければならないのです。

しかし、未払残業代等で裁判になった場合、付加金を必ず支払う訳ではありません。

裁判例をみても、未払残業代と「同額」の付加金を認めた事例もあれば、未払残業代よりも「低額」の付加金を認めた事例や、付加金を全く認められなかった事例もあります。

この判断基準は何なのかというと「裁判官が悪質と認めるか否かは、違反の理由や程度などを総合的に考え、支払いの有無や金額を決定する」としています。

中には「会社は悪質ではない」とされながらも、未払残業代の30%を付加金として、支払いを命じられた例もあります。
また、別の事案では、会社は合理的な理由もなく割増賃金を一切支払っていないので、付加金の支払いを命ずることが相当であり、付加金の減額をする特別の事情もないとして、付加金「全額」の支払いを命じた判例もありました。
つまり、この事例では会社が従業員に支払う金額が2倍になったということです。

では、実際に付加金の支払いが命令された場合、会社としてはどのような対応をすべきなのでしょうか?

未払い残業代の支払いをめぐる裁判で、最高裁は「付加金は会社が残業代を支払っていなければ、当然に発生するものではなく、「従業員の請求」により「裁判所」が命ずるものであり、未払い残業代の支払いが完了している場合、付加金の請求はできない」としました。

この判決をみると、基本的に判決前までに未払残業代等を支払えば、付加金の支払いを逃れることができるということになります。

こうなると、「制裁としての付加金の意味が無いのではないか?」という意見もありますが、実際、この裁判後に未払い残業代等で争った裁判では、判決前に未払い残業代の支払いを行った会社が増えたことも事実ですので、結果として、判決前で未払残業代等の支払い後は付加金の支払い命令ができないと考えてよいでしょう。

近年は、未払い残業代等に関する裁判は非常に多いのが現状ですし、労働時間や残業についても「始業前の朝礼の時間は労働時間である」とか、「始業前にする掃除の時間は労働時間に算入すべきである」とされ、「社員が勝手に残っていても残業代の支払いは必要である」などと判断された事例もあります。

このような場合で裁判となり、会社が負けた場合は未払残業代等と付加金の「両方の」支払い命令が出るかもしれないのです。

もちろん、未払い残業代等につき、「発生の有無、金額」を争うことはありますが、発生しているならば、その事実は消せません。
労働時間がどう計算されるかというのもケースバイケースですが、未払い残業代等の支払いは仕方がないケースもあります。

しかし、付加金は別問題です。

付加金については解説した通り、社員が裁判所に訴える前提で、裁判所が支払い命令を下すものです。

そして、最高裁の考え方によれば、判決前に未払い残業代等を支払ってしまえば、基本的には付加金の支払いは不要なのです。

裁判に至るかどうかは別問題ですが、もし、皆様方の会社で未払い残業代が「明らかに」発生しており、裁判になってしまったら、これについては判決前に支払うことをお奨めします。
これだけで支払う金額が大きく変わってくる可能性がありますので、必ず、この内容を覚えておいてください。

最善の策は、残業を発生させない、残業が発生したらきちんと残業代を支払うことですので、未払い残業代等で裁判に訴えられることのないよう、よろしくお願いします。

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