社労士小垂のコラム (No.22)

No.22 2016年3月18日

従業員の採用はどこまで自由にできるのか?

いつもお世話になりありがとうございます。

またまた就職活動のルールが変わり、来年の3月卒業予定の大学生等の就職活動が、この3月から始まりました。

アベノミクスの成果が見込めないまま、実体経済の回復が実感されない中、就職活動は「売り手市場」となっており、大企業では非常に多くの応募が見込まれております。

ただ、中小企業は相変わらずの採用難が続いており、学生の意識は大企業、有名企業に集中して、中小企業への就職を拒んでいるようです。

そこで今回は、従業員を採用するにあたり、会社にはどこまで自由があるのかを考えてみたいと思います。
ちなみに、会社が従業員を採用することに関しては、憲法に保障された「契約自由の原則」に含まれますので、会社が自由に決めることができます。

この「採用の自由」を詳しくみてみると、
  • 1.採用の人数・・・何人の社員を採用するのか?
  • 2.募集方法・・・公募か縁故か?
  • 3.選択方法・・・筆記試験の有無など
  • 4.契約締結・・・誰と契約するか?
  • 5.調査・・・どのような調査をするか?
など、会社が自由に決定することができます。
つまり、採用については会社の自由度がとても高いのですが、厚生労働省のリーフレットなどを見ると、採用の面接時に「聞いてはいけないこと」などが書かれており、その内容は、
  • (1) 本籍・出生地に関すること
  • (2) 家族に関すること(職業、続柄、健康、地位、学歴、収入など)
  • (3) 住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類など)
  • (4) 宗教に関すること
  • (5) 支持政党に関すること
  • (6) 人生観、生活信条に関すること
  • (7) 尊敬する人物に関すること
  • (8) 思想に関すること
  • (9) 労働組合、学生運動などの社会運動に関すること
  • (10)購読新聞、雑誌、愛読書などに関すること
  • (11)合理的、客観的に必要性が認められない健康診断の実施
などとなっています。

法律的には「採用は会社の自由」、厚生労働省のリーフレットには「面接時の制限あり」ということで、このギャップに戸惑う会社が出てくるのです。

会社が従業員を採用するということは、会社にとっては自社の将来を決定するほど重要な活動であるにもかかわらず、あまり制限が多すぎると面接そのものが成り立ちませんし、聞くべきことは聞かないと、自社にとって最も貢献し得る従業員の採用もできなくなります。

そこで、過去の判例を調べてみると「採用の自由」の立場を取った「採用面接の際、労働者の思想や信条の調査は許される」との最高裁の判断がありました。

だからといって、何を聞いてもOKということではありません。

例えば、厚生労働省のリーフレットには「合理的、客観的に必要性が認められない健康診断の実施はNG」となっています。
しかし、従業員を採用し、入社後に健康状態に問題が見つかり、働くことができなければ、会社の戦力にならないどころか、休職となれば、その休職期間の社会保険料の会社負担も生じることさえありますから、面接時には健康面のチェックは必ずしなければなりません。

これには「合理的、客観的な理由があり」ということになるのです。

もちろん、いきなり面接で「あなたはうつ病ですか?」「あなたは過去に大病をしたことがありますか?」などとは聞けませんので、常識的に考えた話の流れのなかで、だんだんと聞き出していきましょう。

会社と従業員は相互選択の関係の中で、雇う側と雇われる側の信頼関係で成り立っていますから、相互に信頼することができなければ組織は成り立ちません。
そういう信頼関係を築ける従業員を見つけるのが採用面接という第1段階なので、当然、その1段階で信頼関係が築けない要素を持った人は不採用とすべきです。

これを確認するのが採用面接なのですから、厚生労働省のリーフレットの「聞くのはNG」という項目でも業務遂行上で必要なことは聞くべきなのです。

何度も言いますが、会社が従業員を採用するということは、会社の将来を決定するといっても言い過ぎではない、非常に大切な仕事です。
従って、法律に触れない範囲で「聞くべきこと」は漏らさず聞き、会社の将来に貢献できる優秀な従業員を確実に採用できるよう、今一度、貴社の採用のあり方をお考えくださいますよう、お知らせいたします。

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