社労士小垂のコラム (No.21)

No.21 2016年1月19日

厚生年金保険の加入促進強化策が実施されています!!

少々遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。

新年早々、厚生年金保険に関する以下の記事が目に入りました。

本来は厚生年金に加入する資格があるのに、国民年金に加入している人が約200万人いると推計される問題で、安倍晋三首相は13日の衆院予算委員会で、厚生年金への加入促進対策を強化する方針を示しました。
事業所が保険料負担を逃れるため加入の届けをしていなければ義務違反に当たるとし、夏の参院選を控え、野党の追及をかわす狙いもあるとみられる発言です。

その対策として、「加入漏れ」とみられる79万事業所すべてに調査票を送付するほか、日本年金機構が個別調査を行い、平成27年度から3年間は厚生年金適用対策の集中期間で、年金機構はすでに79万事業所に文書や電話で指導しているが、昨年11月末の加入は約6万3000件にとどまっているようです。

首相は予算委で「事業所が責任を果たさない状況を放置するのは問題だ」と発言し、対象者の把握のため、年金事務所が国民年金に加入している人の就労実態を確認したり、市町村が関連情報を年金事務所に提供したりするよう求めることなどを検討することも表明しました。

厚生年金は法人事業所のほか、従業員が常時5人以上いる個人経営の事業所(農林水産業などを除く)の加入を義務づけておりますし、正社員のほか、勤務時間・日数が正社員の4分の3以上あるパートなども対象になり、保険料(月収の17.828%)は従業員と事業主が半分ずつ負担し、国民年金より給付も手厚い制度となっております。

ただ、アベノミクスの恩恵が波及していないとされる中小・零細事業者にとって保険料負担は重く、年金機構の担当者は「経営状況が大変で払いたいけど払えないというケースが多い。何回も指導が必要だ」と話しており、加入促進は簡単ではなさそうです。

政府関係省庁が示した対策として日本年金機構は、国税庁の「納税情報」を共有することで社会保険未加入事業所をリストアップ(あぶり出す)することになっています。

今までは国税庁が保有する情報と日本年金機構が共有することはありませんでしたので、これまで違法な社会保険未加入(加入逃れ)が通用してきたのは、この行政の縦割り状態があったからだと言われています。
さらに、法人登記簿情報の活用にも集中的に取り組むことも明記しておりますし、雇用保険適用情報や関係機関(労働局、運輸局)等からも情報を収集することになっており、今までのような中途半端な取り組みではないようです。

今回の取組の強化により、中小零細の約80万社が調査対象になると考えられており、政府もかなり本腰を入れて立ち入り調査に取り掛かるということがわかります。

厚生労働省が開示している「厚生年金保険の適用推進業務のフロー」を見てみますと、大まかには3段階に分類されます。

第1段階では、法人登記簿と厚生年金の適用事業所との不一致情報を基に、外部委託による事業実態の把握や文書、電話および訪問による加入勧奨が行われます。

第2段階では、年金事務所職員による加入指導が行われ、期日を指定した「来所通知」が来たり、事業所への「直接訪問」が行われることになります。
なお、国税庁の情報、雇用保険被保険者が50名以上の事業場や関係機関(労働局、運輸局)等の情報、従業員からの情報提供による場合は、許認可や税務書類等から稼働実態が明らかですので、第1段階を経ずに第2段階である加入指導が行われることになります。

そして、第3段階では、認定による加入手続きが行われますが、この場合は、事実上強制的に加入手続きが実施されることになります。

社会保険未加入事業所に対する対策は、「日本年金機構が加入を指導する」とし、「指導に応じない場合には法的措置で強制加入させる」となっており、中小企業にとってはかなり厳しい内容になります。

これまでも指導は行われていましたが、法的措置による強制加入まで至るケースは稀でしたが、今後は強制加入になるケースが増えることになるでしょう。

いずれせよ、社会保険が未加入となっている事業所の個別事情などは、国にとっては感情論であり、法律的には一切配慮されることはありません。
また立入検査による強制加入によって最大過去2年まで遡られる場合もあるため、早めに対策を打っておくことをお勧めします。

一方で自主的な社会保険加入をした事業所については遡及されるケースはほとんどなく、弾力的な取り扱いがされているのも事実です。 調査が来る時点で、社会保険に加入義務があることは把握されているので、指導後は入らずに逃れることは難しいでしょうが、そのまま「年金事務所の言いなり」で加入させられては大変ですので、事前の対策が必要になってまいります。

さらに、将来的には「マイナンバー」の活用の一部として、労働保険と社会保険の加入状況も簡単に把握されますので、自社で働く従業員の適正な加入を心掛けておく必要もあります。

タイトル一覧



評価制度・賃金制度づくり会社を守る就業規則セミナーサイトマップ
HOMEサイトマップお問い合わせ情報保護方針