社労士小垂のコラム (No.13)

No.13 2014年9月22日

社員研修の時間が残業代支払いの対象になる?

先日、ある社長から「土・日曜日を含む社員研修をした場合、残業代を支払うべきなのでしょうか?」というご相談がありました。
社員の能力向上のために積極的に社員研修を実施している会社はたくさんあると思いますが、その研修時間が就業時間外におよぶ場合は注意が必要になります。

例えば、社員が自ら会社に残り、個人的に勉強するとき、会社からの命令ではなく、業務性もない場合であれば、基本的には残業にはなりません。
ただし、自主的な勉強や研究の場合でも、本人の業務と密接に関わっているとか、近いうちに予定されている業務に関係することである場合などは残業と見られる可能性もあります。

もちろん、これが上司からの命令だったら「上司の命令 = 会社の命令」なので、残業となってしまいます。
さらに、労働局から労災認定の新基準が出てからは、残業のカウントが厳しくなったことも事実で、「職場にいる = 業務中」とみなされがちになったのです。

少し前になりますが名古屋地裁で結審した判例では、労働基準監督署では残業時間としなかった通常の業務時間以外に行っていた社員の自主的改善活動であるQCサークル活動(業務の品質を向上させるための職場での活動)の時間を「これらの活動は会社が管理する業務と判断されるべきもの」で残業時間として認められてしまったのです。

そうしたことから、業務に関連する活動は「残業とみなされる可能性が高い」のですが、残業とみなされない社員研修もあります。

例えば、
  • 会社からの強制ではなく、社員が自主的に集まって活動する
  • 出欠確認などを行わないで、あくまでも参加した社員のみで行う
  • 欠席しても業務に直接関わることではないので、特に大きな影響が無い
などの場合で、あくまでも業務とは別で社員の自主的な活動であることがポイントになってきます。

ある会社では休日に研修を行っていましたが、社員への説明では、業務ではないことを強調し、出欠を取ることはせず、私服で受講することを促し、研修中の出入りは自由にし、業務に関連するところは後日レジュメを配布するというところまで徹底していましたので、この研修が残業とみなさることはないでしょう。
それでも、この会社の社員は全員参加しており、遅刻する人も早退する人もいませんでした。

社員研修を行う場合、それが全く業務に関係ないということは考えられませんし、どこまでが直接的に業務と結びつくかという明確な基準もありませんので、終業時間後や休日に社員研修を行なう場合には特に注意すべきです。

繰り返しになりますが、平成13年の労災認定の新基準以降、「職場にいる = 業務中」とみなされがちになっていますので、一般的には「研修時間 = 労働時間」と考えた方が無難です。

会員の皆様の会社で社員研修を実施するならば、前述の条件をご確認ください。

多くの会社では社員研修を行ないますが、その目的は社員一人一人の知識と技術、さらには人間性の向上を図り、結果として会社の成長と発展をより確実なものにするためであると思います。
ただ、最近の労働問題の本質を考えたとき、そのような会社の思いを理解せず、自己の利益、権利のみを要求する事案が増えているように思われます。

先ほどの会社のように、全ての社員が積極的に自己の能力向上を図り、会社の成長と発展に精一杯の努力を惜しまない「社風」を実現してほしいと願っています。

社員のために行った「社員研修」が要らぬ労働問題に発展しないよう、十分に注意していただきたいと思います。

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