社労士小垂のコラム (No.12)

No.12 2014年7月22日

「合法的」に残業代を減らすことを考えましょう!

アベノミクス効果や東京オリンピックに向けての景気回復の期待が膨らみ、景気は徐々に回復しつつあるといわれる中、中堅中小企業を取り巻く経営環境は依然厳しい状況で、各社が経営合理化を推進されておりますが、人件費(特に残業代)対策はどうされていますか?

今回は、「社員が勝手に残業しても、残業代は支払うべきか?」をお伝えします。

私共にはこんなご質問がよくあります。
「指示していない仕事を社員が勝手にしています。この場合でも、残業代を支払うべきなのでしょうか?」
皆様方の会社ではいかがでしょうか?

このことを考える前に、法律上の「労働時間」の定義をみてみると、
  • 会社に管理されている時間であり、従業員が労働する時間
となっており、「会社の指示で働く時間 = 労働時間」なのです。
しかし、ご質問のように「会社の指示が無くても残業している」場合も多々あり、この場合は「社内で仕事する = 会社に管理されている」となります。
そのため、会社の指示が無くても「残業を黙認した」とみなされる場合が多く、例えば、徳州会事件(大阪地裁 平成15年2月)の判例からは、
  • 残業していることを会社が知っている(黙認している)
  • 会社からの具体的な指示は無い
という場合でも、「残業命令あり」と判断されるということです。

残念ながら、法律上では残業命令が無い「勝手な」残業でも、残業代を支払わなければならないのです。

そこで、対策の一つとして「残業の事前許可制」を導入すれば、勝手な残業をしていても、残業代を支払う必要はありません。
これを導入すれば、事前許可の無い残業をしたとしても、残業時間を計算しなくてもよく、「通常の業務ならば」勝手な残業をしても、残業代は払わなくていいのです。

ただし、事前許可が取れない不測の事態などに対応する必要もありますので、この場合は残業時間としてカウントされます。  実際、「残業の事前許可制」を導入したら、売上を伸ばしながら30%の時間短縮となったケースもあります(ちなみに、付き合い残業やダラダラ残業が削減されただけなので、会社の効率は落ちませんでした)。

大切なことは
  • 残業の事前許可制などを導入する
  • 社内のフローを見直し、残業時間そのものを削減する
ということです。

それから、話は変わりますが、管理職は残業代が付かない立場となりますので、意味の無い管理職ばかりを増やす会社もあります。

しかし、管理職の残業代免除は管理職として機能していることが条件なのですから、結果的には違法です。
だから、肩書きを「課長」としても、問題解決にはならないのです。

例えば、社会的に大きな反響を呼んだ「マクドナルドの店長の未払い残業」の裁判がありましたが、結果は東京高裁で和解となり、実質的には会社が負けたのです。

この件では「店長は管理職ではない」と判断されましたが、ここからも「残業代の免除 = 肩書きとは関係ない」と言えるのです。

つまり、「管理職としての実態」が必要なのです。ちなみに、管理職としての実態とは簡単に言うと
  • 部下がいて、人事権を持っている
  • 管理職は出勤時間の管理がされていない → 遅刻、早退、休日出勤をしても給与に関係ない
ということですが、いかがですか?

皆さんの会社では「勝手な残業」をしている社員はいませんか?
もし、いるならば「会社に貢献していない残業代」を支払っている可能性もあります。

仕事の進め方を見つめ直すとともに、事前許可制の導入なども含めて、就業規則等会社のルールを色々な角度から検討してみてください。

タイトル一覧



評価制度・賃金制度づくり会社を守る就業規則セミナーサイトマップ
HOMEサイトマップお問い合わせ情報保護方針