社労士小垂のコラム (No.1)

No.1 2012年7月25日

労働基準監督署の調査は何を調べるのか?

労働保険の申告期限も終わり、もうしばらくすると労働基準監督署の定期調査が増えてくと思われます。
皆様方は労働基準監督署は何を調べにくるのかご存知でしょうか?
今回は、あまり知られていない「労働基準監督署の調査」についてお知らせしようと思います。

先々月5月11日に東京労働局から、平成23年度の労働基準監督署の調査の結果について報告がありました(兵庫労働局のデータが未発表ですので、同様の傾向があると類推して考察します)。
これは東京にある18の労働基準監督署が実施した昨年の調査の結果ですが、ここで特筆すべきポイントは実施件数で8,659件となっており、前年に比べて810件減となりましたが、前々年に比べて約1.8倍にも増加していることです。

それから、労働関連法の違反をしている割合は71.0%で、前年比微減となっており、この違反項目を多い順で挙げると、次の内容となっています。
 (1)労働時間    2,359件(調査件数に占める違反割合27.2%)
 (2)割増賃金    1,737件(調査件数に占める違反割合20.0%)
 (3)就業規則    1,435件(調査件数に占める違反割合16.6%)
 (4)労働条件明示  1,285件(調査件数に占める違反割合14.8%)

さらに、今回の報告書の最後に「今後も積極的に監督指導を行っていく」と明記されておりますので、今回は、「労働基準監督署の調査内容について」確認してまいります。

今、増えている調査は「定期監督の調査」であり、定期監督とは「労働基準監督署の計画により実施される調査」で、いわゆる社員が飛び込んだことにより行なわれる調査とは違うもので、労働基準監督署がランダムに選んだ会社が対象となっております。

労働基準監督署には「労働条件自主点検表」がというチェックシートがあり、全国的に調査項目は同じように行われ、漏れの無いように調査しているようです。
また、チェックシートが事前に送られてきて、調査日の前日までに「FAXで回答してください」となっている場合もあり、回答に基づき、書類の状況や実態などを効率的にチェックする体制を取っている監督署もあります。

それでは、具体的に調査される項目をみていきますと、

(1)労働条件の明示

労働契約を締結する際、労働時間、賃金、退職に関する条件などを明記した書面を交付しているかどうか?
 労働契約書を社員に説明して交付しているかがポイントで、書面の交付が無いと、指摘され、是正勧告を受けます。

(2)就業規則の有無

就業規則を作成して、届け出ているかどうか?または、内容が法律にあっているかどうか?
 常時10人以上の従業員を雇用する場合は監督署に届出る義務があり、届出がされているか、さらには就業規則の中に絶対的記載項目である労働時間、休日、休暇、賃金などの項目が正しく規定されているかどうかチェックされます。

(3)労働時間

1週間の労働時間は何時間に定めているか?
 1週間で40時間を超えていると勧告を受けます。

(4)変形労働時間制

変形労働時間制を採用している場合、法律の要件を満たしているか?
 変形労働時間制とは、繁忙期と閑散期で労働時間を変える制度のことですが、就業規則や労使協定が定められているかどうか、労使協定がある場合、監督署に届け出ているかチェックされます。

(5)時間外・休日労働に関する協定書

残業や休日労働を指示する場合、この協定書が絶対に必要になり、この協定書を従業員と締結して、監督署に届け出ているか?
 協定書の内容と法律が合致しているか、協定書の有効期限はいつかがチェックされます。

(6)休日について

原則、休日は1週間につき1日以上必要で、その他の休日に関する法律の要件を満たしているか?
 最低4週間に4日の休日が与えられているか、1日8時間の労働時間の場合、週休2日の休日が与えられているかチェックされます

(7)年次有給休暇について

法律どおりの日数を従業員に与えているか、残日数の管理は適正か?
 各人別の管理がされ、パート社員などには別の決まりがあり、有給休暇の買取りなどの違法行為は無いかがチェックされます

(8)給料からの控除項目

給料から法的に控除できるものは税金、社会保険料のみで、これら以外のものを控除するには労使協定の締結が必要となります。
 食費など、税金等以外を控除する場合、労使協定が締結されているかチェックされます。

(9)割増賃金

残業代、休日出勤手当を支払った場合、法律どおりの割増賃金が支払われているか?
 残業25%以上、休日35%以上、深夜残業50%以上の割増率、割増賃金の計算をする際、各種手当も含めて計算しているかチェックされます。

(10)健康診断の実施

1年に1回、定期健康診断を実施し、各人別診断結果を保存管理しているか?
 全員きちんと受診させているか、受診しなかった従業員への対応は適切か、過去の診断結果を適切に管理しているかチェックされます。

(11)最低賃金

最低賃金法で定められている最低賃金以上の支払をしているか?
 最低賃金は絶対に違反してはなりません。厳しい対応がなされます。

このように、多岐にわたる項目を質問され、そして、現在使用している書式、賃金台帳、締結された労働契約書などの提出が求められますし、矛盾点などを指摘されれば更なる強制調査もありえます。

ここで注意していただきたい点は、調査に立ち会った方は余計な事をしゃべらないということです。
社内における書類の不備から多くの質問が出てきて、余計なことを答え、勧告が増えてしまったケースもありますし、質問以外のことまで話をし過ぎて墓穴を掘ってしまったことも多々あります。

このように、定期監督の場合は形式的、かつ、全般的な調査が行なわれますが、全般的に行なわれるだけに、これらの項目は「すぐに」何とかなるものではありません。
結果として、調査の連絡があってから焦る方が本当に多いのですが、「備えあれば、憂いなし」といいますように、今すぐに、是非、上記の項目を再チェックしてみてください。

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